あぁ、まただわ……

まったく、これだから最近の若い人は!!







『お隣さんは見た。』









あぁ、今日もだわ……。

最近私の隣に引っ越してきた神田夫婦、新婚さんだか何だか知らないけど、今日も玄関先でイチャイチャしてるわ。
あんな所であんなことして恥ずかしくないのかしら?
私と旦那だって今はサハラ砂漠のような関係だけど30年前は………


決して羨ましいとかそんなんじゃないんだからね!!




………それにしても隣の旦那様ハンサムねぇ…。



「お〜い、おまえ。 お茶。」



あぁ、うちの旦那が呼んでるわ。
お茶ぐらい自分で入れなさいってんのよ、まったく!!





















今日の晩御飯は、ほうれんそうと人参の牛肉巻炒めね。

さすが、スーパーのタイムセールなだけあってすごく安いの。
この、横に大きい体のおかげで何とか勝ち取れたわ。


あとは、人参とほうれん草だけ………




……ってあら?
向こうから歩いてくるのは…



「片平さん。」



そう私は片平悦子(54)よ。

………って何で自己紹介なんてしているのかしら?




買い物カゴ片手に、神田さん家の奥さんが歩いてこっちに来たわ。

参考までに買い物カゴを覗き込むと、蕎麦が1、2、3、……5つ……
まだ二人暮らしよね、何に使うのかしら…?












あの後少し世間話をして、成り行きで神田さん家の奥さんと一緒に帰ることになったのよ。

せっかくだから、今朝の事少し注意しようと話を切り出したら…



「み、見られてたんですか!?

見苦しいものをお見せしてしまってすみませんでした…。」



って注意する前に素直に謝られてしっまったわ……。


謝られちゃあ、もう何も言えないじゃない!!




そんなことを悶々と考えていたら、神田さん家の奥さんの声が聞こえたと同時にすごい力で押されて転ん……………


…だのに痛くないわ…?




さっき視界の端に見えたのは近くにある『黒団高校』の制服を着た二人組だったわ。
私を転ばせた犯人はあんた達ね!!
謝りもしないなんて!! まったく、最近の若い者は!!



「大丈夫ですか? 片平さん。」



えぇ、私は大丈夫よ。


………?

なぜか私の下から聞こえた神田さん家の奥さんの声。
不思議に思ってそっちを向けば私をかばってくれたのか、私の下敷きになっている神田さん家の奥さんが!!


な、なんで私の下敷きになっているのよ!?
大きい体の私が下敷きになるべきなのに…!!
あぁ、足をすりむいて血が出てるじゃない!!


「そんな事より、片平さんに怪我がなくてよかったです。」









な、な、な、なんていい子なの!?

血が出て痛いだろうに、私のことを心配してくれるなんて…。
ウチの旦那なんて私が包丁で手を切っても知らんぷりよ!?



もう神田夫婦の朝のいちゃつきなんてどうでもいいわ!!
二人は新婚なんですもの、しかたないわ。
明日からは、見て見ぬふりをするわよ。




それよりも今は神田さん家の奥さんに怪我を負わせた犯人よ!!
私はちゃんと見たのよ、黒団高校の制服を着た二人を。
背格好だってちゃんと覚えているわ!!



覚悟なさい!!!!














END



あとがき


片平悦子視点です。
片平さんの名前は何となく浮かんだ名前です。
パワフルなおばちゃんです。


このあと犯人の二人組は無事成敗されました。



私のパソコン、何回変換しても『神田山地の奥さん』と変換されます。
ちょっとは学習しておくれ!!





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