朝から行っていた毎日の日課でもある鍛錬を終え、鍛錬場でもある教団を囲っている森から、
教団内へ戻ろうと歩いていると、教団の入り口に自分の恋人が立っていた。
「やっと帰って来た。 おかえり、ユウ!!」
「あぁ。
……つーか、なんて恰好をしてやがんだお前は。」
「かわいいでしょ?
今、ちまたで流行っているって噂の、メイドさん衣装だよ!!」
「はぁ?」
そう言っては、ただでさえ短いスカートのすそを持ち上げ、神田の前でクルッと回ってみせる。
するとスカートがふわりと持ち上がり、今にも下着が見えそうだ。
ふと視線を上にあげれば、胸元も大きく開いており少し覗きこめば谷間が見えてしまうだろう。
…などと考えてしまい、目のやり場に困っている神田をよそに、は話を進める。
「今日はハロウィンでしょ? だから仮装してるの。
多分持ってないと思うけど、Trick or treat!!」
「ハロウィンだ? くだらねェ。」
「くだらないとは何よー!!
ほかのみんなはちゃんとお菓子くれたよ!?」
「おまっ!! そんな恰好でうろちょろしてたのかよ!?」
「そうだけど?」
「ハッ!! ガキ癖ぇことしえんじゃねェよ。
見てらんねェからこれでも羽織ってろ、バカ!!」
普段よりかなりきわどい格好をしているのこの姿が、自分以外の男の目に入ったことに苛立ちを感じた神田。
自分のコートをに押しつけながら、いらだちを抑えきれずに、つい声を荒げて思ってもない事を口にしてしまう。
「何もそんなに言わなくってもいいじゃない!!
ラビがこういう格好すれば男なら誰でも喜ぶって言ってたから、ユウにも喜んでほしくって、
ジョニーにアドバイスもらったりして頑張って作ったのに!!
それなのに……ユウが、似合ってないって言った!!」
そう言いポロポロと大粒の涙を流して泣き始めた。
の涙に思わずうろたえてしまう神田。
「バッ!! 似合ってないとは言ってねェだろ!?
それに、あのバカ兎の言うことなんか聞いてんじゃねェ!!」
「見てらんないって言った!!」
「そ、それは!!
(他の野郎にそんなカッコ見られたくなかったとか言えねェ…)」
「なによ!? やっぱ似合ってなかったじゃない!!」
「だから、それは〜〜…っ!! 来い!!」
本格的に泣き出してしまったに、どうする事も出来なくなってしまった神田は、
の腕をつかみズンズンとどこかへ向かって歩き出す。
「ちょっと、ユウ。 どこ行くのってば!!」
「いいから黙ってついて来い!!」
こんなやり取りを何度か繰り返しながらついた先は、食堂だった。
「おい、ジェリー!! なんでもいいからケーキ作ってくれ!!」
「あらん? 神田が蕎麦以外を頼むなんて珍しいじゃない。」
「ウルセェ。」
「ふ〜ん……そういうことねん。
完成まで少し時間がかかるから、あっちで座って待ってなさい。」
神田に悪態をつかれたジェリーは、神田に腕を掴まれているをみて、
何かを悟ったようにニヤリとしながら、二人に座って待つように勧める。
「ユウの口からケーキなんて言葉が出るとは…」
「………ハロウィン、これでいいだろ…。」
「うん。 ありがと!!」
「あと…」
「ん?」
「それ、似合ってんぞ。」
「え!?」
『Trick or treat!!
-お菓子をくれなきゃ、悪戯するぞ!!-』
「(神田に褒められちゃった!!
ラビにお礼言わなきゃ……ってあれ?ラビが誰かと追いかけっこしてる…。)」
「チッ…。
(ガラにもねェ…。 もとはと言えば、あそこでまぬけっ面さげて走ってるバカ兎のせいだ!!)」
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