真っ白いドレスで着飾った私。
その隣には同じように真っ白いタキシードを着たあなた。
この時を迎えられたことが嬉しくて、始終、頬が緩みっぱなしな私。
いつも仏頂面なあなた。
でも今日は、心なしか笑って見える。
おそろいの指輪がはめられた私の左手を、あなたの右腕に添えて、みんなに祝福されながら二人で歩みを進める。
独身の友達の少し殺気の様なものを背に受け、苦笑しながら綺麗なお花のブーケを大きく後ろへと投げた。
『ほやほや』
雀のチュンチュンと言う鳴き声で、夢から現実へと呼び起される。
夢にまで出た昨日の出来事を思い返す。
すると、背後で人物がモゾモゾと動き後ろから抱きしめられ、耳元で「はよ。」と、寝起きで少しかすれた声でささやかれた。
「おはよう、ユウ。」
あいさつを返し、昨日自分の旦那様となったばかりの神田の顔を見ようとしたが、さらにギュッと抱きしめられて、後ろを振り向く事が出来ない。
はなんとか神田の腕の中から抜け出そうと奮闘する。
しかし、神田に気にする様子はない。
「あー…。 ねみィ…。」
「それは…! ユウが昨日……その…」
「昨日…なんだ?」
「………
………………寝かせてくれないから………。」
言いづらそうにごにょごにょと話すの、後ろから見える耳が真赤になっているのを見て、神田は意地が悪そうに笑う。
「初夜つったら、んなもんだろ。」
「もう!!
ユウの馬鹿。」
さらに顔を真っ赤にさせて居た堪らなくなったは、神田の腕の中から無理矢理逃れ、ベッドの下に落ちている服をすばやく身に着け、立ち上がる。
「あ? どこ行くんだよ?」
「シャワー浴びるの!!」
「何なら一緒に浴びるか?」
「馬鹿!!
ユウもそろそろ起きなきゃ。
今日も道場に行かなくちゃならないんでしょ?
っ…!!」
をからかいながら身を起し、ベッドから出ようとする神田。
神田が裸な事を思い出し、は慌てて後ろを向き神田から目をそらし、シャワーを浴びるため風呂場へと向かった。
いつまでたっても、こういった事に慣れようとしないの態度に「今さらだろ。」と言いながら、下だけ身に着け立ち上がる。
そして、との出会いの場でもある道場へ向かうための準備に取り掛かる。
シャワーを浴び、風呂場から出てきたと入れ替わるようにして神田がシャワーを浴び、は朝食の用意をするため台所に立つ。
しばらくして、神田がシャワーを終えるころには、朝食の味噌汁の香りが辺りに漂い始めた。
ちなみに、神田もも二人とも朝は和食派なので、神田家の朝食は和食である。
二人は真新しいダイニングテーブルに向かい合って座り、たわいもない話をしながら結婚して初めての朝食を終えた。
そして、神田は道場へ行くために、は神田を見送るため、玄関へと向かう。
「ユウ、気をつけてね。」
「あぁ。 行ってくる。」
「行ってらっしゃい。」
防具と竹刀を担ぐようにして持ち、玄関のドアに手をかけたとき。
「あ、ユウ。 ちょっと…。」
が神田を呼び止め、こっちに来てと小さく手招きをする。
「なんだよ。」
「いいから早く。」
神田は訝しみながらもに近づくと、両肩にの両手が置かれ、引き寄せられたかと思うと、
ちゅっ
と言う可愛らしいリップ音と、
「頑張ってね。」
という言葉が聞こえた。
「なっ!?」
「ほら、早く行ってらっしゃい!!」
驚く神田をグイグイと玄関の外へと押しやり、バタンとドアを閉める。
ドアの外側では神田が唇を抑えながら、
ドアの内側ではが顔を抑えながら、
それぞれ顔を真っ赤に染めていた。
END
あとがき
突然の出来事に弱い神田。
愛する人の前では普通に笑う神田。
……だったらいいのになぁ…
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『いたずらと後悔』