I Cannot Thank You Enough. 02





「どうしよう、どうしよう、どうしようっ!!」


私はとんでもないことをしてしまった!!

何度も何度も「どうしよう。」と心の中で繰り返しながら、教団内を走り抜ける。




事の発端は数分前、床に書類が落ちていることに気づかずにいつものようにリーバーさんのデスクの上に飛び乗ろうとジャンプをした時だった。
足もとに落ちていた書類をふんずけてジャンプをしてしまって、体勢が崩れた。

それでも何とかデスクの上に乗ることはできたけれども、上手に着地する事が出来ずに、ジャンプした時の勢いのままデスクを上をゴロゴロと転がり、さまざまな資料がいくつも積み上げられた資料の山にぶつかって、ようやく勢いが止まった。
その時運悪く、資料の山の上に置かれていたインク瓶が私の体がぶつかった衝撃で倒れてしまった。
倒れてしまったインク瓶をどうする事も出来なくて、そのまま私の体に中に入っていたインクが降り注ぐ。

それだけならよかったけれど、当然の様に私の下敷きになっていた、つい直前までリーバーさんが書きあげていた書類にまでインクがこぼれ、真黒に染め上げる。

いろんな所をぶつけて少し痛む体を起き上がらせて、自分の足元のインクでできた黒い水たまりを見た瞬間、頭の中が真っ白になった。



リーバーさんが私の方に手をのばして、


……?」


いつもより低い声であの人がそう呟いた気がした。



















締め切りの迫る書類をガリガリと書きあげていたら、いきなりが転がってきて、そうかと思えば今度はインク瓶が倒れて、の綺麗な真っ白い毛とデスクの上が真っ黒になる。
あまりに突然の事で、オレは思わず目が点になった。

真っ黒になってしまった書類については、あんな所にインク瓶を置いていたオレが悪かった。
そんなことよりも、が転がってきた時に顔面強打していた気がして、怪我がないかどうか見るためにを抱き上げようと手を伸ばせば、すごくおびえた目でオレを見た。……様な気がする。

どうしたのかと思っての名前を呼べば、すごい勢いでどこかに走り去ってしまった。


に逃げられたことにショックを受けたオレは、手を伸ばした格好のまま固まる。



「班長ー、おっかけなくていいんですかー?」



ジョニーのその言葉で、オレも走って黒いインクでできた足跡をたどってを追いかける。










(…ったく。 どこ行ったんだ、は。)


の足跡をだどって行き着いた先が、よりによって室長のプライベートな実験室だったりするから、オレの背中に冷たい汗が流れる。

『あんなにここには絶対入っちゃダメだぞ!!って言い聞かせたのに…』とか、『何でこんな危険な部屋の扉が開いているんだ!?』とかブツブツとつぶやきながら恐る恐る中に入る。


そこまで広くない部屋の中にカラフルな液体が入った試験官がズラリと並んだ室内を、オレは早くこの部屋を出たい一心でキョロキョロとを探せば





…………いた。




「こんな所にいたのか、。」

「に゛ゃ!?」









ど、ど、ど、どうしよう、見つかってしまった!!

ここならば見つからないと思っていたのに、こんなにもあっさりと見つかってしまって、頭の中がパニックになる。

往生際悪くまだ逃げようと、近くにあった棚に飛び乗る。
するとリーバーさんが何か焦ったような様子で、私の大好きなその大きな手をのばしてくる。
私は思わずその手にすり寄ってしまいそうになったけれど、グッとこらえてその手から逃れるために後ろにさがる。


リーバーさんが前に進めば、私が後ろにさがる。

なんて事を繰り返しているうちに私の後ろに足場がなくなる。
けれども目の前の大好きな手から逃れることに必死だった私は、その事に気がつかないまま後ろにさがってしまい、周りにあったカラフルな液体が入った、瓶のようなものを巻き込んで一緒に落ち、床にたたきつけられる。






私と一緒に床に落ちたことでガラスが割れ、中に入っていた液体が私の体にかかる。
今日はよく液体を被る日だなぁ…。なんて事を考えていたら、焼けるような熱さが私の全身を襲う。






(あ、あつい…)


近くでリーバーさんが私を呼ぶ声が聞こえるけれど、あまりの熱さに目を開ける事が出来ない。


うずくまるようにして耐えていると、ボフという音と共にその熱さも治まった。




いったい何が起こったんだろうと思って恐る恐る目を開いたら、目を見開いて私を指さしながら口をパクパクと動かしているリーバーさんがいた。


………あれ? なんだか、視界がいつもと違う……?





さっきの落下でリーバーさんから逃げていたなんて、事をすっかり忘れていた私は、取りあえず何故かすごく驚いているリーバーさんの元に寄ろうとするけど、今度は体が変だ。

一体どうしたものかと思って、ふと手を見てみれば………あれ? 肉球がない!?
リーバーさんが私の肉球の感触気に入ってくれていたのに…!



……というかこの手の形、なんだか人間の手見たい。


あっ、足もだ。 体も…。











あれ?


これってもしかして私、人間になっちゃった…?






…………みたいな…?













END







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拍手ありがとうございます。




恐るべし、コムイ!!