I Cannot Thank You Enough. 01
私はネコ。
琥珀色の瞳と、真っ白い毛が自慢。
少し前までは薄汚れた野良だったけれど、ある優しい人間が私を拾ってくれた。
今でも覚えてる。
あの日の事を………。
私がいつもの様に街の中を散歩していたら、地面に落ちていた鋭いガラスの破片で肉球を切ってしまって、しかもその破片が傷口に挟まってとれなくなった。
ズキズキとする痛みをはじめはガマンしていたけれど、歩くたびに挟まった破片が傷をえぐってますます傷が広がって、とうとうガマンできずにその場にへたり込む。
誰かに助けを求めて鳴いてみたけれど、通りすがっていく人間は皆、泥と血で汚れた私をキタナイものを見る目で一瞥するだけ。
「もう、どうにでもなっちゃえ。」
と鳴くのをやめて、痛みをガマンして立ち上がろうとした時。
「お前、怪我してるのか?」
と、あの人が私に声をかけてくれた。
私があの人の目を見て
「助けて。」と鳴けば、あの人は、
「ホームに帰ってお前を手当てしてやるからな。もう少しだけ我慢してくれよな。」
と言って、大きな手で私を抱き上げてくれた。
あの人の腕の中がとてもあたたかくて、とても気持ち良かったからついつい眠ってしまった。
あとで聞いた話だけれど、眠った私を見てあの人は、私が死んでしまったのだと勘違いをしてとても焦ったんだ、と。
私の頭をなでながら、そう話してくれたあの人の顔を見て、私の胸があたたかくなったのを覚えている。
なんでだろう…?
あの人は私に『教団』とかいう、とても大きな家をくれた。
「今日からお前の家はここだ。 どこでも自由に出入りしていいからな。」
「あ、でも夜にはちゃんと俺の部屋に戻ってこいよ?」
あの人は私に名前をくれた。
「いつまでも『お前』じゃダメだよな。
そうだなー…。 今日からお前は『』だ。」
あの人は私に人のあたたかさを教えてくれた。
「、もう傷は何ともないのか?」
「あ、。 今日、私と一緒にお風呂に入りましょう?」
「相変わらずは可愛いさねー。」
「このクッキーとてもおいしいんですよ。 も一口どうぞ。」
「チッ……。 頭撫でりゃいいのか…?」
「。 今日こそボクの実験台になってくれるかい?」
あの人は私に、いろんなものをたくさん与えてくれた。
私、は毎日がすごく幸せです。
すごく幸せだけれども、一つ大きな悩み事があるのです。
どうして私はネコなんでしょう。
もし私が人間だったなら…………。
忙しいあの人のお手伝いが出来るのに。
あの人に、疲れている人間に効くと言われる『膝枕』とやらをしてあげられるのに。
あの人と一緒に楽しく会話ができるのに。
何よりも………、
リーバーさん。
あなたに、
「ありがとう。」
と伝えることができるのに。
それが私の悩みであり、願いでもあるのです。
今はネコである私だからこそ、リーバーさんにしてあげられることをがんばって、いつかリーバーさんと同じ人間になれる事を夢見ては毎日幸せな日々を送っています。
END
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人間になることを夢見るネコが主人公(…主猫公?)なお話です。
お相手は、最後の方に名前が出てきたあの方です。
ちなみに、デフォルト名の『
アンバー』は『
琥珀』という意味です。