Ver.Baku
「支部長〜? バク支部長〜…、どこですかー?
ハァ…。 まったく、バカでかいんだからここは…。」
頭をキョロキョロと動かしながら、が自分の上司であるバク・チャンを探し始めて約小一時間…。
ありとあらゆる場所を探したが、一向に見つかる気配はない。
探せども探せども見つからない事に、はだんだんと苛立ちを感じる。
「もう!! どこに隠れてんのよ!!」
「おいおい、どうしたんだよそんなに恐い顔して。」
「バク支部長が見つからないのよ…。」
「支部長? おい、誰か支部長しらねぇか?」
「支部長ならさっき、東南の資料室にいるのを見かけましたけど…。」
「本当!? ありがと!!」
「いえ。」
目撃情報をくれた、たまたまそこにいた科学者にお礼を言ってから、はバクがそこからいなくなる前にと、走って目撃情報のあった場所へと向かう。
・
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「バク支部長!!」
「っ!? な、なんだ…!?」
走ってこの南東の資料室に来たその勢いのまま、バクの名前を呼びながら扉をあける。
すると、入口に背を向けて座っているバクが勢いよく振り向き、後ろ手で慌てた様子でガサガサと何かを自分の背中に隠す。
「………何やってたんですか…?」
「べ、別に! 何も…。」
「…どうせ、本部のリナリーちゃんの隠し撮り写真でも見てたんでしょう?」
「ち、ちがっ…!!」
横目で、呆れた風なの言葉を、バクは慌てて否定する。
しかしに軽くあしらわれるだけで、全く否定の言葉を信じようとしてくれないので、否定することに思わず力が入る。
すると彼の持病である、極度に興奮するとジンマシンが出てしまうという、厄介な病気が発病する。
「だからっ、違うと言っているだろう!! オレが見ていたのはっ…」
「ハイハイ…。 わかりましたよ、もう…。
そんなことより、今日の本部行き、私もご一緒する事になりましたので。」
「そんなことっ!?
……まぁ、分かったんならそれでいい…。
何故お前も…? 本部に何の用だ?」
「以前、コムイ室長に頼まれていたものが出来上がったので。」
「それなら、オレに頼めばコムイに渡しておくぞ?」
「いえ。 今日はバレンタインなので本部の方にチョコでもあげて、ゴマでも擦っておこうかと…。」
「そ、そうか…。」
片手に持っていた大きな紙袋を見せるように持ち上げ、悪びれた様子もなく、しれっとそう言ってのけたに、バクの背中に何故だか冷たい汗が流れる。
「では、用はこれだけですので。」
とバクを残して資料室をそのまま出ていこうとするの腕を掴んで引き止める。
「…?」
「今日はバレンタインなのだろう…?」
「…ハイ。」
「だから、そのっ…、たとえばチョ 「支部長ー!!」 コ…。」
の腕をつかんだまま、目を泳がせて何かを言おうとすると、タイミングよく入ってきた李佳の声でバクの声が遮られる。
自分の言葉を遮られ、バクの額に青筋が浮かぶ。
「なんだ!!」
「えっと、ノアの方舟準備ができたんで支部長を呼びに…。
………オレ、お邪魔でした…?」
そう言って李佳が指をさすその先には、バクに掴まれたままのの腕が。
その事に気づいたは、サッとバクの手を振りほどき何事もなかったかのように話を続ける。
「そんなことないわ。
むしろいい時に来てくれたわ。
ちょっと待ってね……… ………ハイ、これ。」
「なんスか? コレ。」
「今日はバレンタインでしょ? だからチョコレート。
いつも一緒にいる二人にも渡しておいて。」
「マジっすか? ラッキー!! ありがとうございます。」
「どういたしまして……といっても、市販のものだけどね。
それじゃあ行きましょうか。」
「はい。」
「…って、ちょっと待て!!」
当然、自分も貰えると思っていたバクは二人のやり取りを黙って見ていたが、そのまま部屋を出て行こうとする二人を引き留める。
「オレには無いのか…?」
「何がですか?」
「なっ…!?」
「…?」
バクの背中に何やら重い空気を感じた李佳は、何もわかっていないにそっと耳打ちをする。
「さん、さん。」
「?」
「チョコレートっスよ!」
「あぁ…!! …………………無いです。」
の爆弾発言に衝撃を受け、バクが手にしていたファイルが落ちて中身があたりに散らばる。
しかしその衝撃が大きかったせいか、その事に気づいていない様子でに詰め寄る。
「何故だッ…!!」
「…だって、バク支部長はリナリーちゃんから貰えるからイイかなと思って…。」
「なんでそうなる…!!
部下の李佳の分はあって、上司であるオレの分が無いのだ!!」
「え〜…っと、ごめんなさい、先行ってますね!」
「コラー!! 待て、逃がさんからな!!」
思いのほか、バクのチョコレートがない事への怒りが大きい事に気づいたは、取りあえず逃げることにした。
それをバクが見逃すわけもなく、追いかける。
二人に置いて行かれた李佳は、しかたなくバクが落としていったファイルを片付ける事にした。
散らばったファイルの中身を一枚一枚拾って見てみると、イノセンスについての資料もあったが、大半はリナリーの隠し撮り写真だった。
色々な表情をしたリナリーの写真を拾うたびに、李佳は苦笑する。
「(支部長………これは犯罪っス…。)
………ん…?」
何度も眺めたのか、一枚だけ写真の端が少しボロボロになったものが裏向けに落ちていた。
それを拾って表を見れば、そこにはが笑顔で写っていた。
「支部長ってもしかして…?
………あぁ、だからさっきあんなに怒ってたのか…。」
この写真と先ほどのバクの怒り様を結びつけ、ピンときた李佳。
思わぬところでバクの秘密を知ってしまい、「どうすっかなぁ…。」と呟く。
とりあえずはこのファイルを持主の元へと返すために、李佳は資料室を後にする。
「支部長ー、ファイル忘れてますよー。」
「ん? あぁ、ありがとな。」
「ところで支部長、その中にさんの写真「だぁぁああーーー!!」
………………やっぱそうなんスね。 ジンマシン出てるッスよ。」
「………。」
END
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